お知らせ

  • 論文発表

    2026年3月15日付けで、副センター長 森本 悟先生の責任著者論文が下記の通り”Neurological Science”誌に掲載されました。

    「NMOSDにおける早期の抗C5療法:その根拠と臨床的エビデンスに関する症例報告」です。

    Kido H, Morimoto S*, Matsuoka M. Early anti-C5 therapy in NMOSD: rationale and clinical evidence. Neurol Sci. 2026 Mar 14;47(4):345. doi: 10.1007/s10072-026-08952-2. PMID: 41826590.

    *Correspondence.

  • 学会発表

    第103回日本生理学会大会

    2026年3月10日(火) に、東京医科大学(東京)で開催された第103回日本生理学会大会にて、森本副センター長が下記の発表を行いました。

    森本悟. iPS Cell-Based Drug Discovery for Amyotrophic Lateral Sclerosis: Practical Application of TR/rTR. 第103回日本生理学会大会 東京. 2026.3.10. シンポジウム

  • 論文発表

    2026年3月6日付けで、副センター長 森本 悟先生の共著論文が下記の通り”J Hypertens”誌に掲載されました。

    「自律神経機能障害に伴い、年次24時間自由行動下血圧測定で過大な血圧変動の進行を認めた病理学的症例報告」です。

    Ishikawa J, Saito Y, Toba A, Fukushima K, Takei T, Morimoto S, Iwata A, Hara M, Murayama S, Arai T, Harada K. Progression of exaggerated blood pressure variability in annual 24-h ambulatory blood pressure monitoring associated with autonomic dysfunction: a pathological case report. J Hypertens. 2026 Mar 6. doi: 10.1097/HJH.0000000000004287. Epub ahead of print. PMID: 41818403.

  • 開催報告

    「慶應義塾大学殿町先端研究教育連携スクエア」と「社会医療法人雪の聖母会」との間で包括連携協定を締結

    2026年3月5日、慶應義塾大学三田キャンパスにおいて、慶應義塾大学殿町先端研究教育連携スクエアと社会医療法人雪の聖母会との包括的連携協定締結に向けた調印式を開催しました。

    本協定は、臨床・教育・研究をはじめ、学生・教職員の交流、遠隔講義、施設設備の共同利用、地域社会・国際社会への貢献など、幅広い分野での連携を推進するものです。

    両者がそれぞれの強みを生かしながら協力を深めることで、人材育成や研究活動の発展、社会へのより大きな貢献が期待されます。

    調印式当日は、両機関の関係者が出席し、今後の連携の方向性を共有するとともに、協定書への調印が行われました。

    今後は本協定のもと、実践的かつ継続的な連携を通じて、医療、教育、研究のさらなる発展を目指してまいります。

  • 学会発表

    第1回日本疾患幹細胞学会学術集会

    2026年2月17日(火) に、ステーションコンファレンス東京(東京)で開催された第29回グリア研究会にて、岡野センター長の特別講演、森本副センター長が下記の発表を行いました。

    岡野栄之. iPS細胞技術を用いた神経発達障害と神経変性疾患の病態解析. 第1回日本疾患幹細胞学会学術集会 東京. 2026.2.17. 特別講演

    森本悟加藤玖里純、中村志穂、小澤史子、髙橋愼一、岡野栄之.第1回日本疾患幹細胞学会学術集会 東京. 2026.2.17. ポスター

    ③藤内玄規、中村亮一、熱田直樹、中杤昌弘、岡田洋平、難波真一、岡田随象、森本悟岡野栄之、祖父江元. ALSレジストリを基盤とした患者由来iPS細胞を用いた病態解明と治療法. 第1回日本疾患幹細胞学会学術集会 東京. 2026.2.17. ポスター

  • 講演報告

    近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN-P)患者レジストリを活用した エビデンス創出研究」第2回班会議の開催

    2026年2月23日(月)沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー) 研修室において、

    近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN-P)患者レジストリを活用した エビデンス創出研究」第2回班会議が開催されました。

    班会議では、下記の通り当センターメンバーからも発表が行われました。

    ・岡野 栄之 センター長「iPSを活用したHMSN-P病態解明と創薬」

    また、患者・家族会「希の会」の方々を中心とした多くの方が参加されました。

  • 開催報告

    2026年2月13日(金)殿町・羽田再生医療拠点(CReM TONOHANE) 研修 in 株式会社獺祭を実施

    殿町・羽田再生医療拠点(CReM TONOHANE) 研修 

    日程:2026年213日(金)

    訪問先株式会社獺祭(山口県岩国市周東町獺越2128)https://dassai.com/

    訪問目的:

    「日本酒製造の観点から、殿町・羽田再生医療拠点CReM TONOHANEの新たな可能性を探る」

    本研修は、獺祭が従来の日本酒製造の常識を刷新し、データ活用により杜氏の伝統技術を再現しつつ、新しいビジネスモデルを確立してきた背景と要諦を学ぶことを目的とした。加えて、獺祭ニューヨークへの進出、Moonプロジェクト等の挑戦を通じて、桜井会長が体現されてきた「心配するな。『最初は』絶対うまくいかんから」という「失敗を前提に挑戦を継続する経営」の実像を伺い、当方拠点(殿町・羽田再生細胞医療拠点)で推進する再生医療・細胞治療の社会実装のあり方に示唆を得ることを狙いとした。
    さらに、原材料/研究シーズ開発から産業化に至る一連のプロセス(安定供給、製造加工、品質評価、グローバル展開)における課題と解決の視点について意見交換を行い、エビデンスに基づき有効性・安全性が担保された最先端医療を適切に選択できる仕組みづくりへ接続することを目的とした。

    研修レポート:

    1. 製造工程見学

    製造現場では、原料処理から醸造、品質管理に至る一連の工程を見学した。特に、製造の各段階でデータを収集・活用し、品質を安定させるための意思決定に結びつけている点は、従来の属人的技術を「再現可能なプロセス」へ変換する取り組みとして印象的であった。
    また、現場の整理整頓、安全・衛生管理、導線設計など、品質と効率の両立に向けた運用の工夫が随所に見られ、製造業としての基盤の強さを実感した。

    2. ディスカッション(桜井会長との意見交換)

    桜井会長からは、獺祭が「常識に穴をあける」革新を実現してきた背景として、伝統を否定するのではなく、伝統技術の価値を理解したうえで、データを用いて再現性・拡張性を獲得していく姿勢が語られた。
    さらに、事業の浮沈を経験しながら挑戦を重ねる過程、国内外展開における判断軸、そしてMoonプロジェクトなどの象徴的な挑戦を通じて、失敗を抱えたまま前進する経営のリアリティを学んだ。

    3. 当方拠点からの紹介

    当方より、殿町・羽田再生細胞医療拠点における再生医療・細胞治療の取り組みを紹介した。特に、エビデンスに基づいて有効性・安全性が担保された最先端医療を、適切に選択できる仕組みづくりを目指している点、また研究シーズから産業化までを見据えた体制整備を進めている点を共有した。

    4. 学び・示唆(当方への適用可能性)

    本研修を通じて、以下の点が当方の再生医療・細胞治療の社会実装に直結する示唆として整理できる。

    1.属人的技術の「再現可能なプロセス化」
    伝統技能を尊重しつつ、データにより工程を分解・可視化して再現性を獲得する考え方は、細胞製造における品質の一貫性確保(ばらつき制御)と高い親和性がある。とりわけ、暗黙知の形式知化、工程パラメータの標準化、逸脱管理の考え方は、医療分野における品質保証(Quality by Design等)にも通底する。

    2.品質とブランドの同時成立
    「良いものを作る」だけでなく、それを社会に理解され、選ばれる形に翻訳する(価値の伝達・体験設計)という観点は、先端医療における社会受容や実装モデル設計に不可欠である。

    3.グローバル展開と供給責任
    海外進出は単なる販売網拡大ではなく、安定供給、品質規格、現地要件への適合、説明責任を含む総合戦である。細胞治療でも同様に、原材料調達から製造・物流・品質評価・規制対応までを一気通貫で設計する必要がある。

    4.挑戦を継続する組織文化
    挑戦を許容し、失敗から学び続ける文化が、長期的な革新を支えていることが明確であった。現場の挨拶や応対の質の高さも含め、組織文化が品質と成果を規定するという事実を再確認した。

    5. 今後の検討課題(意見交換を踏まえた論点)

    • 原材料・部素材(細胞原料、培地、消耗品等)の安定供給とロット変動管理

    • 製造工程における重要工程パラメータの可視化・データ統合(工程内試験、逸脱兆候の早期検知など)

    • 品質評価指標の設計(有効性・安全性に直結する指標の優先順位付け、規格化)

    • 産業化フェーズのボトルネック(スケールアップ、コスト、教育訓練、サプライチェーン、規制)

    • グローバル展開を見据えた標準化と説明責任(国際規格・現地規制・臨床エビデンスとの整合)

    6. 総括

    獺祭の取り組みは、伝統を基盤にしながらデータを武器として再現性・拡張性を獲得し、新市場を切り拓くモデルであった。品質を支える工程設計、組織文化、グローバル視点、そして挑戦を継続する姿勢は、当方が目指す再生医療・細胞治療の社会実装においても中核となる要素である。
    本研修で得た示唆を踏まえ、エビデンスに基づき安全性・有効性が担保された医療を適切に選択できる仕組みづくりに向け、研究開発から産業化までの全体設計を一層具体化していく。

    7. 謝辞

    本研修の実施にあたり、桜井博志会長には製造工程のご説明から意見交換の機会に至るまで、格別のご配慮を賜りました。工場内のご案内では若手社員の方々に丁寧で分かりやすい説明を頂戴し、理解が一層深まりました。あわせて、社員の皆様の明るく気持ちのよい挨拶と応対に触れ、貴社の社風と品質を支える土台を強く実感しました。ここに記して深く感謝申し上げます。

  • 論文発表

    2026年2月11日付けで、センター長 岡野 栄之先生の共著論文が下記の通り”Inflammation and Regeneration誌”に掲載されました。

    「ヒト誘導多能性幹細胞由来のNCAM陽性神経堤様細胞移植後の神経再生の増強」に関する報告になります。

    Amemiya T, Ouchi T, Kimura H, Okuyama K, Phan TQ, Iwamoto T, Nakagawa T, Matsumoto M, Nakamura M, Okano H, Nagoshi N, Shibata S. Enhanced nerve regeneration after transplantation of NCAM-positive neural crest-like cells derived from human iPSC. Inflamm Regen. 2026 Feb 11;46(1):10. doi: 10.1186/s41232-026-00409-5. PMID: 41673753; PMCID: PMC12934083.

  • 受賞のお知らせ

    森本副センター長が第6回社会実装化助成金 はまぎん財団 Frontiers「研究開発型」部門 優秀賞を受賞しました

    • 日 時:2026年1月30日(金)13:00–18:30

      場 所:横浜銀行 川崎支店(はまぎんラーニングセンター)

      内 容:ファイナリストプレゼン/審査/表彰

    • 森本副センター長が第6回社会実装化助成金 はまぎん財団 Frontiers「研究開発型」部門 優秀賞を受賞しました。
    • 受賞テーマは、「iPS細胞創薬とADC技術を融合した革新的治療薬の開発」

    公益財団法人はまぎん産業文化振興財団 HP:https://yokohama-viamare.or.jp/grant.html

  • 開催報告

    2026年1月30日 第12回再生創薬セミナー(Dr. Alex Ng)

    第12回再生創薬セミナー
    日時:2026年1月30日(金)
    場所:キングスカイフロント マネジメントセンター(RGB2 1階 会議室)
    開催方法:現地開催

    本セミナーでは、GC Therapeutics
    Alex Ng 博士(Chief Scientific Officer & Co-Founder)を講師としてお迎えし、
    「TFome™ Forward Programming Enables Systematic Empirical and AI-guided Cell Fate Design」
    と題したご講演を賜りました。

    講演では、転写因子ネットワークを体系的に活用する TFome™ Forward Programming 技術について、AIを活用した新規細胞誘導系の構築や、創薬・再生医療分野への応用可能性をご紹介いただきました。従来の試行錯誤型のアプローチとは一線を画す新たな細胞誘導系構築戦略として、多くの示唆に富む内容となり、大変有意義なセミナーとなりました。

    Ng先生、このたびは誠にありがとうございました。

  • 論文発表

    2026年1月29日付けで、慶應義塾大学医学部4年生 髙橋 航来さんの筆頭論文が下記の通り”Inflammation and Regeneration”誌に掲載されました。

    「血清細胞外小胞中の隠れたエクソン由来ペプチドが散発性筋萎縮性側索硬化症の診断に持つ可能性」に関する報告です。

    Takahashi K†, Kato C†, Ueda K, Nakamura S, Ozawa F, Moritoki N, Shibata S, Takahashi S, Morimoto S*, Okano H*. Diagnostic potential of cryptic exon-derived peptides in serum extracellular vesicles for sporadic amyotrophic lateral sclerosis. Inflamm Regen. 2026 Jan 29;46(1):8. doi: 10.1186/s41232-026-00404-w. PMID: 41612503; PMCID: PMC12924518.

    †equally contributed, *Corresponding authors

    <解説>
    【世界初】血液検体からALSの分子病理を直接捉える新手法を確立:血清細胞外小胞内の「隠れたペプチド」が早期診断のブレイクスルーに
    1. 本研究のポイント:ALS診断のパラダイムを根本から変える「リキッドバイオプシー」の実装
    本研究は、難病中の難病とされる筋萎縮性側索硬化症(ALS)において、長年の課題であった「低侵襲かつ分子病理に基づいた診断指標」を確立した、診断の歴史を塗り替える画期的な成果です。慶應義塾大学を中心とする国際的研究チームは、最新のプロテオミクス技術を駆使し、患者の血液中に浮遊する微細なカプセル「細胞外小胞(EV)」の中に、疾患の本質的な病態を反映する「隠れたペプチド」が封じ込められていることを世界で初めて解明しました。
    本研究の核心的な成果は以下の3点です。
    • TDP-43病理を反映する「クリプティックペプチド(CP)」の同定: ALSの主要な病理であるTDP-43タンパク質の機能不全に由来する異常なタンパク質断片(CP)を、血清由来の細胞外小胞(sEV)内から直接検出することに成功した。
    • IGLON5由来ペプチドの圧倒的な特異性を実証: 特にIGLON5遺伝子由来のペプチドが、孤発性ALS(SALS)患者において50%という極めて高い頻度で検出された一方、健常群では0%であることを突き止めた。
    • 「分子診断」としての高い識別精度(AUC 0.82)を提示: 複数のペプチド検出数を組み合わせることで、SALS患者と健常者をAUC 0.82という良好な精度で識別可能であることを示した。
    【戦略的意義:侵襲的検査からの解放と早期介入】 これまでALSの確定診断には、針を背中に刺して髄液を抜く「腰椎穿刺」という患者への負担が大きい侵襲的な検査や、年単位に及ぶ経過観察が必要でした。本成果は、血液一本という極めて低侵襲な「リキッドバイオプシー」により、これまでブラックボックスであった中枢神経系の分子病理を直接可視化することを意味します。これにより、診断までのタイムラグを劇的に短縮し、不可逆的な神経脱落が起こる前の早期治療介入を可能にする、真の精密医療(プレシジョン・メディシン)への道を拓きました。

    2. 研究背景:ALS診断の「空白の期間」とTDP-43という門番の不在
    ALSは発症から確定診断に至るまでに平均20ヶ月近くを要するという、残酷な「診断の遅れ」が世界的な課題です。生存期間が平均20〜48ヶ月であることを踏まえれば、この空白期間の短縮は患者の予後を左右する最優先の戦略的課題といえます。
    生物学的プロセス:細胞内の「品質管理官」の消失と毒性ペプチドの生成 ALS患者の約97%において、RNAの制御を司るタンパク質「TDP-43」が本来の居場所である細胞核から消失し、細胞質へ誤って蓄積する(誤局在)ことが知られています。正常な状態では、TDP-43は「分子の門番(クオリティ・コントロール)」として、不要な遺伝子配列がタンパク質へと翻訳されるのを防いでいます。しかし、この門番が持ち場を離れると、「クリプティックエキソン(CE)」と呼ばれる本来は排除されるべき遺伝子の断片が混入し、毒性を持つ可能性のある異常なタンパク質「クリプティックペプチド(CP)」が生成されてしまうのです。
    【ブレイクスルー:血液脳関門を越える「情報の運び屋」への着目】 これまで、血液中からこれらの異常ペプチドを直接検出することは、他のタンパク質による希釈や分解の影響で困難を極めていました。そこで我々は、細胞から分泌されるナノサイズの小胞「細胞外小胞(sEV)」に着目しました。sEVは親細胞(運動ニューロン等)の分子情報を内部に封じ込めたまま、血液脳関門を越えて血流へと到達します。いわば、細胞内部で起きている「分子の事故」の証拠を運ぶ堅牢なメッセージカプセルです。このsEVを濃縮解析することで、血液というアクセスしやすい検体を用いながら、脳や脊髄の深部で起きている病理現象を捉えることに成功したのです。

    3. 研究内容・成果:血清EV解析が捉えた「病理のサイン」
    研究チームは、10名の健常対照者(HC)と20名の孤発性ALS(SALS)患者を対象に、質量分析ベースの高度なプロテオミクス解析を実施しました。
    主要な解析データ:IGLON5ペプチドによる特異的検出 解析の結果、sEV内から4種類のタンパク質由来のクリプティックペプチドが同定されました。
    由来タンパク質
    健常群 (n=10)
    SALS群 (n=20)
    統計的有意差 (P値)
    IGLON5
    0 (0%)
    10 (50%)
    0.044 (補正後)
    RANBP1
    8 (80%)
    19 (95%)
    0.251
    ALPK2
    5 (50%)
    15 (75%)
    0.231
    ACTN1
    0 (0%)
    3 (15%)
    0.532
    ここで注目すべきは、IGLON5由来ペプチドの圧倒的な特異性です。ALPK2やRANBP1が健常者からも一部検出された(酸化ストレスや解析精度の限界を示唆)のに対し、IGLON5はSALS群のみで有意に高く検出されました。これらのペプチドの検出数を統合したROC解析では、現在臨床応用が進む血清ニューロフィラメント軽鎖(NfL)の精度(AUC ≈ 0.86)に匹敵する、AUC 0.82という極めて実用的なパフォーマンスを達成しました。
    【So What?:症状から「分子」による確定診断へ】 これまでのALS診断は、他の疾患の可能性を一つずつ消去していく「除外診断」が主であり、必然的に誤診のリスクや時間のロスを伴いました。本研究が示したのは、血液中のsEVから「TDP-43病理の直接的な産物」を検出するという、生物学的な証拠に基づく「分子診断」の確立です。これにより、初期症状が似通った他疾患との鑑別が容易になり、誤診の防止と迅速な診断確定が実現します。

    4. 今後の展開:ALSの精密医療と「自己免疫」という新たな視点
    本研究成果は、将来のALS診療ガイドラインを書き換えるだけでなく、治療薬開発のスピードを劇的に加速させます。
    戦略的展望:創薬の「羅針盤」と新たな病態解明
    • ALSの自己免疫疾患仮説: 本研究で特定されたIGLON5は、稀な自己免疫性神経疾患の原因因子としても知られています。このCPが「ネオアンチゲン(新しい抗原)」として提示され、自己免疫反応を誘発している可能性があり、これはALSが自己免疫的な側面を持つ可能性を示唆しています。将来的には、免疫療法を組み合わせた新たな治療戦略の構築が期待されます。
    • 治療薬評価のバイオマーカー: TDP-43の機能を回復させる治療薬の治験において、血中のCP減少を「薬が効いている証拠(標的関与)」として利用することで、創薬プロセスの効率化を推進します。
    次なるステップ 今後はサンプルサイズの拡大に加え、機械学習の導入や、神経特異的EV(L1CAM陽性小胞など)の単離技術を組み合わせることで、さらなる高感度化を目指します。
    結びにかえて ALSという過酷な疾患に対し、私たちは血液の中に「隠された分子のサイン」という強力な武器を見出しました。早期診断が当たり前となり、発症直後に最適な治療を開始できる未来。その実現はもはや遠い夢ではありません。本研究が、患者様とそのご家族に新たな希望の灯をともすことを確信しています。

    5. 補足情報
    論文情報
    • 論文タイトル: Diagnostic potential of cryptic exon-derived peptides in serum extracellular vesicles for sporadic amyotrophic lateral sclerosis
    • 掲載誌: Inflammation and Regeneration (2026)
    • 掲載日: 2026年1月29日(オンライン公開)
    • 著者: Takahashi, K., Kato, C., Ueda, K., Morimoto, S., Okano, H. 他
    • DOI: https://doi.org/10.1186/s41232-026-00404-w

    用語解説
    • TDP-43: 通常は細胞核内でRNAの制御を司る「分子の門番」。ALS患者の97%で細胞質へ誤局在し、機能不全に陥ることが病態の核心とされる。
    • クリプティックエキソン(CE): TDP-43の門番機能が失われることで、本来は取り除かれるべき遺伝子配列がmRNAに誤って混入する現象。これが翻訳されると、異常な「クリプティックペプチド(CP)」が生成される。
    • 細胞外小胞(EV): 細胞から分泌される直径数十〜数百ナノメートルの微細な小胞。内部に親細胞の分子情報を保護したまま循環するため、低侵襲な診断を可能にする「リキッドバイオプシー」の標的として注目されている。
  • 論文発表

    2026年1月28日付けで、センター長 岡野 栄之先生の共著論文が下記の通り”Nature Human Behaviour誌”に掲載されました。

    「哺乳類脳における情報統合とその麻酔による崩壊を制御する収束型トランスクリプトームおよびコネクトーム制御因子」に関する報告になります。

    Luppi AI, Uhrig L, Tasserie J, Mediano PAM, Rosas FE, Singleton SP, Gutierrez-Barragan D, Gini S, Castro P, Signorelli CM, Golkowski D, Ranft A, Ilg R, Jordan D, Muta K, Hata J, Okano H, Liu ZQ, Yee Y, Destexhe A, Cofre R, Menon DK, Gozzi A, Jarraya B, Stamatakis EA. Convergent transcriptomic and connectomic controllers of information integration and its anaesthetic breakdown across mammalian brains. . 2026 Jan 28. doi: 10.1038/s41562-025-02381-5. Epub ahead of print. PMID: 41606107.

  • 論文発表

    2026年1月22日付けで、センター長 岡野 栄之先生の共著論文が下記の通り”Stem Cell Reports”誌に掲載されました。

    「翻訳経路の解明:多能性幹細胞由来治療法開発のためのISSCRベストプラクティス」に関する総説になります。

    Barry J, Abranches E, Baptista RP, Barry C, Brandsten C, Bruce K, Carpenter MK, Cavagnaro J, Collins L, Csaszar E, Dashnau J, de Villa D, Fynes K, Gabaldo M, Hao J, Harel-Adar T, Hei D, Henchcliffe C, Hidalgo-Simon A, Hollands J, Hursh D, Jackman S, Kelly K, Kim JH, Kim H, Kino-Oka M, Lakshmipathy U, Lamb T, Lazic SE, Loring JF, Ludwig TE, Mariappan I, Monville C, Mountford JC, Nagy A, Okano H, Pellegrini G, Persson A, Prutton K, Rasko JEJ, Sareen D, Sato Y, Shnaiderman A, Stacey G, Svendsen CN, Tomishima M, Trounson A, Viswanathan S, Wang S, Wydenbach K, Zhang A, Zylberberg C, Mosher JT, Bharti K. Charting the translational pathway: ISSCR best practices for the development of PSC-derived therapies. Stem Cell Reports. 2026 Jan 22:102784. doi: 10.1016/j.stemcr.2025.102784. Epub ahead of print. PMID: 41576937.

  • 開催報告

    2026年1月19日 第11回再生創薬セミナー(Prof. Shuibing Chen)

    第11回再生創薬セミナー
    日時:2026年1月19日(月)
    場所:キングスカイフロント RGB2
    開催方法:現地開催

    Weill Cornell Medicine Shuibing Chen博士(Shuibing Chen, PhD)に、

    (Kilts Family Professor, Director of Diabetes Program, Vice Chair of Innovation, Department of Surgery, Director of Center of Genomic Health Weill Cornell Medicine)

    Human Pluripotent Stem Cells, Organoids and Drug Discovery」というタイトルでご講演を賜りました。

    iPS細胞やオルガノイドモデルを用いた、革新的な創薬プラットフォームに関するお話を頂き、大変有意義なセミナーとなりました。

    Chen先生、有難うございました。

  • 受賞のお知らせ

    森本副センター長が第8回日本医療研究開発大賞受賞 日本医療研究開発機構(AMED)理事長賞を受賞しました

    2026年1月17日(土)

    • 場所:首相官邸2階大ホール

    森本副センター長が第8回日本医療研究開発大賞受賞 日本医療研究開発機構(AMED)理事長賞を受賞しました。

    受賞テーマは、「iPS 細胞創薬で見出された筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬候補を用いた医師主導治験と個別化医療実現に向けた橋渡し研究」

    コメント:本受賞は岡野栄之教授、髙橋愼一教授、中原仁教授、慶應神経内科、臨床研究推進センター、患者様・ご家族・主治医、試験関係者の皆様、AMEDによる多大なご支援の賜物です。また、授賞式では高市内閣総理大臣より激励を頂戴しました。今後もチームサイエンスでTR/rTRの往還を加速し、世界をリードしてまいります。

     

    首相官邸HP:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/amed/dai8/index.html

    AMED HP:https://www.amed.go.jp/news/event/20260116_report.html

     

    【功績概要・受賞のポイント】
    • iPS 細胞創薬により見出された筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬候補を用いて第I/IIa 相医師主導治験を実施し、
    安全性・忍容性と疾患進行抑制効果を示すことで、iPS 細胞創薬の世界初のProof of Conceptを確立した。
    • 全被験者のiPS 細胞由来運動ニューロンを用いて薬剤反応性を評価、in vitro での薬剤感受性と臨床効果の相関、さ
    らには遺伝的背景や細胞表現型との関連を明らかにし、iPS 細胞創薬に基づく個別化医療の実現可能性を提示した。
    • コレステロール代謝物や細胞外小胞(EV)解析を通じ、治療効果やALS 病態と関連する新規バイオマーカー候補を同
    定し、トランスレーショナル(TR)・リバーストランスレーショナルリサーチ(rTR)を往還する橋渡し研究モデルを構築した。

    【研究概要】
    • 森本悟氏(慶應義塾大学)らの研究グループは、iPS 細胞創薬発のロピニロール塩酸塩を用いて、ALS 患者を対象と
    する第I/IIa 相医師主導治験を実施し、iPS 細胞創薬の臨床的Proof of Conceptを世界で初めて確立した。
    • 同試験の全被験者からiPS 細胞を樹立し、脊髄運動ニューロンにおける薬剤応答性と臨床効果の相関を見出すとと
    もに、polygenic risk score(PRS)および運動ニューロン表現型解析により、孤発性ALSの病態多様性とコレステロー
    ル病態仮説に基づいた薬剤反応性を説明し得る個別化医療コンセプトを提示した。
    • さらに、治験コホート由来試料を用いた解析から、AI(機械学習)も活用し、コレステロール代謝物や細胞外小胞(EV)
    を治療効果予測や病態評価に資する新規バイオマーカー候補として提案した。
    • これらの成果は、iPS 細胞創薬・医師主導治験・オミックス解析を統合したTRおよびrTRの実例として高く評価され、
    これからのiPS 細胞創薬の社会実装および個別化医療実現に向けた重要な基盤となるものである。

  • 論文発表

    2026年1月16日付けで、センター長 岡野 栄之先生の共著論文が下記の通り”Scientific Data”誌に掲載されました。

    「Brain/MINDS マーモセット脳アトラス 2.0:マルチモーダルテンプレートを用いた集団皮質分割」に関するデータ公開になります。

    Gong R, Ichinohe N, Abe H, Tani T, Lin M, Okuno T, Nakae K, Hata J, Ishii S, Delmas P, Heidari S, Wang J, Yamamori T, Okano H, Woodward A. Brain/MINDS Marmoset Brain Atlas 2.0: Population Cortical Parcellation With Multi-Modal Templates. Sci Data. 2026 Jan 16. doi: 10.1038/s41597-026-06601-z. Epub ahead of print. PMID: 41545434.

  • 論文発表

    2026年1月6日付けで、センター長 岡野 栄之先生の共著論文が下記の通り”Stem Cells Translational Medicine”誌に掲載されました。

    「脊髄損傷に対するヒトiPS細胞由来神経幹細胞/前駆細胞治療:前臨床的進展とトランスレーショナルな展望」に関する総説です。

    Ogaki R, Nagoshi N, Okano H, Nakamura M. Human induced pluripotent stem cell-derived neural stem/progenitor cell therapy for spinal cord injury: preclinical advances and translational perspectives. Stem Cells Transl Med. 2026 Jan 9;15(1):szaf073. doi: 10.1093/stcltm/szaf073. PMID: 41510818; PMCID: PMC12784199.

  • 論文発表

    2025年12月25日付けで、センター長 岡野 栄之先生の共著論文が下記の通り”Molecular Brain”誌に掲載されました。

    「ヒト中脳オルガノイドを用いて、ドパミン作動性ニューロンに特有の軸索ミトコンドリアの特徴を明らかにした」報告です。

    Nishijima A, Yokota M, Kakuta S, Yamaguchi A, Ishikawa KI, Okano H, Akamatsu W, Hattori N, Koike M. Human midbrain organoids reveal the characteristics of axonal mitochondria specific to dopaminergic neurons. Mol Brain. 2025 Dec 25. doi: 10.1186/s13041-025-01268-w. Epub ahead of print. PMID: 41444912.

  • 論文発表

    2025年12月11日付けで、センター長 岡野 栄之先生の共著論文が下記の通り”Molecular Therapy Nucleic Acids”誌に掲載されました。

    「ポリグルタミン酸疾患治療のためのCAG拡張を標的とする非環状核酸修飾siRNA」開発に関する報告です。

    Maeda K, Hirunagi T, Sahashi K, Kamiya Y, Iida M, Sakakibara K, Onodera K, Ohyama M, Okada Y, Okano H, Asanuma H, Katsuno M. An acyclic nucleic acid-modified siRNA targeting CAG expansions for polyglutamine disease treatment. Mol Ther Nucleic Acids. 2025 Dec 11;37(1):102802. doi: 10.1016/j.omtn.2025.102802. PMID: 41552385; PMCID: PMC12804371.

  • 学会発表 講演報告

    第29回グリア研究会

    2025年12月6日(土) に、トラストシティカンファレンス仙台 (仙台市)で開催された第29回グリア研究会にて、岡野センター長の特別講演、森本副センター長が下記の発表を行いました。

    岡野栄之. Deciphering the Pathogenesis of Neurodegenerative Diseases: Development and Application of Next-Generation Brain Organoids Containing Glial Cells . 第29回グリア研究会 仙台. 2025.12.6. 特別講演

    森本悟. Establishment of a Rapid and Highly Efficient Differentiation Method for Human Astrocytes Inducible from iPS Cells in Just 14 Days .第29回グリア研究会 仙台. 2025.12.6. 口演

     

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